豊島のお大師さん <香川県・豊島>
瀬戸内の島遍路
霊場巡りは全国津々浦々にありますが、もっとも代表的なものの一つは四国霊場八十八ヶ所です。瀬戸内の島々にも島四国や地四国と呼ばれる、それを模した霊場巡りがあります。小豆島や伊吹島、本島など、瀬戸内のそこかしこで島遍路が行われています。
豊島のお大師さん
豊島にも巡礼の霊場がありますが、そのルーツは四国霊場八十八ヶ所と西国三十三ヶ所巡りにあるようです。西国三十三ヶ所は近畿地方を中心とした観音信仰の霊場巡りです。古文書によると、豊島では1833年(天保4年)に甲生地区の豪商が三十三の尊像を設置したのが始まりとされています。しかし、由緒不明の古より、島内には四国霊場八十八ヶ所が勧進されており、神社やお寺、太子堂などに豊島石でできた厨子がありました。その後大正期に、三十三の尊像を信仰と観光を期して、島内各地域の太子堂や地蔵堂に合祀し、巡礼札所をつくり、ミニ西国三十三ヶ所巡りとしたようです。
毎年旧暦の3月21日(弘法大師の御命日)に地域のみなさんが太子堂などでお遍路さんをお接待する習わしがあります。全国各地様々な地域で行われていますが、豊島では「お大師さん」として地域の年間行事の一つになっています。
お遍路参りをするのは島内の方のみならず、小豆島や四国本土、岡山や遠くは北陸や中部地方からバスを仕立ててお参りに来られるグループもあります。
お接待について
こえび隊は毎年島のお母さんのお手伝いをして、お遍路さんをおもてなししています。豊島も例に漏れず、少子高齢化の影響が大きい地域です。地区によっては、お接待の人手が足りないところもあります。最初は押しかけてお手伝いをさせてもらっていたようなところもありましたが(笑)、今は「来年もお願いね」とお役に立てているようで嬉しいです。
お接待は地区によって特色があり、黒豆ご飯やお赤飯、おはぎ、ところてんなどが振る舞われます。島のお母さんたちは、お参りに来たお遍路さんを心を込めてお接待します。2018年のお大師さんは、5月6日、ゴールデンウィークの最終日に行われました。家浦の井の奥條(いのくじょ)地区にある山川太子堂。集落から山の奥に向かって歩いていくと、緑の深い山懐に小さな太子堂が佇んでいます。
お母さんたちと和やかにお話ししながらお遍路さんを待っていると、20人くらいのグループが次々とお参りにやってきて太子堂は大忙し!次から次へとおはぎをつくります。
忙しいながらもお母さんたちは、お遍路さんとのお話を楽しんでいます。私たちもお母さんたちやお遍路さんと交流できて楽しかったです。
島のみなさんが大事に受け継ぐ、お接待のこころを感じることができた1日でした。