湾内を行き来する船は、子どもたちとお遍路さんとの貴重な足 < 須崎市営巡航船 / 高知県須崎市 >
高知県中央部。「横浪」と呼ばれる内湾に、南北の陸地を行き来する定期船が運航されています。
子どもたちの通学の足
今でこそ湾内北岸は 海岸線に沿って県道が整備されています。
けれど地形を見ると察しが付くところですが、陸伝いに進もうとすると 距離のロスが大きい。そこでこの地では昔から船舶での行き来が交通の中心でした。
浦ノ内湾湾内を、
北岸
↓
南岸
↓
北岸
・
・
・
と行き来する定期船(巡航船・内航船)が今も運航されています。
主な乗客は 地元小中学生。学校は全て浦ノ内湾北岸にあるので、南岸側で暮らす子どもたちは そちらへ通わないといけません。けれどそれを家族が毎日送迎することは現実的に難しい。そもそも浦ノ内湾南岸には 隣の集落同士をつなぐ道路が、現在も存在しない。
そこで巡航船の出番、となるわけです。
巡航船の船着場
埋立船着場(うめたてふなつきば / 高知県須崎市)
現在 巡航船が発着する最も東側。港というより「船着場」の表現が似合います。
この場所は自治体としては須崎市の管轄ですが、須崎の市街地よりも 宇佐町や高岡町(いずれも土佐市)の方が近い。どちらかと言うと須崎市の飛び地のような存在ですが、その辺の事情は 両市の力関係や、道路基準ではわからない 海や船舶が形成した経済圏によるものでしょうか。
穏やかな横浪の海
巡航船に乗り込みます。
高知の海と言えば 荒々しい太平洋が連想されますが、浦ノ内湾は いつも穏やか。
「横浪(よこなみ)」の別名がありますが、これは外洋では打ち寄せる波が陸に到達した時に 縦の波が立つのに対して、内湾である浦ノ内湾は 風で水面に穏やかな横の波が立つことに由来する地名です。
湾内は水深が浅いため、干潮時には 所々に浅瀬が出現します。
そんな風景を眺めながら、始発の「埋立(うめたて)」から 終点の「坂内(さかうち)」まで乗船すると、約1時間の船旅を楽しむことができます。
起源は古く、お遍路さんも利用する巡航船
巡航船の起源は古く、元をたどれば宇佐大橋架橋まで活躍していた「竜の渡し」が起源であるとも言われます。
この場所は 四国八十八ヶ所を回るお遍路さんが通るルートでもあるので、昔から住民に混じってお遍路さんも船で行き来していた「海の遍路道」。第36番青龍寺(しょうりゅうじ)でも そのことを知らせる案内があります。
お遍路さんは完全に歩かないといけない、乗り物に乗ってはいけない。という風に言われることが多いのですが、そこは各お遍路さんの考えによりけりで その限りではありません。
特に人間は水の上を歩く事ができないので、渡し舟は先へ進むために止むを得ないもの。長い旅路において 少し気分転換になる場面でもあります。
須崎市公式ホームページ → 巡航船
※ 写真は古いものを使用しており、現在発着していない船着場が含まれています。最新の運航状況は 公式ホームページをご覧ください
須崎市営巡航船・埋立船着場
< 自家用車 >
高松駅から 約2時間10分、154km
高知龍馬空港から 約50分、33km
※ 主な地点からの最速・最短距離
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