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今も変わらない建造当時の佇まいを見せる鉄橋 < 赤石川橋りょう / 徳島県小松島市 >

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列車に乗っていてワクワクする場面は人それぞれあると思いますが、個人的には鉄橋がハイライトシーンだと思っています。走行時の音や、広がる視界、綱渡り感...
乗る方も魅力たっぷりですが、橋によってはその構造も注目です。こちらの橋で見ることができる煉瓦円柱は、路線が開業した大正時代に由来するの古いものです。

鉄橋がある場所

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赤石川橋りょう(徳島県小松島市)

※橋梁の「梁」の字が常用外漢字なので、名称としては平仮名表記になる

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橋がある場所の徳島県小松島市(こまつしまし)は、徳島市に隣接する人口約36,000人の街。平家討伐に向かう源義経が上陸した地とされ、四国八十八ヶ所の札所としても第18番恩山寺・第19番立江寺が存在する。

こちらは赤石川橋りょうの近くにあるエリアマップ。同鉄橋は描かれていませんが、「現在地」と記された位置に鉄橋があります。

レンガ製橋脚

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赤石川橋りょう最大の特徴が、

8本の煉瓦巻き橋脚
9スパンのプレートガーダー橋桁

これらは同路線が開業した大正5年(1916)のものと考えられます。もしそうであれば、100年以上前から存在し列車の運行を支えていることになります。
レンガに白化や黒化が見られるのは、この部分までが常時水に浸かる部分。この場所自体が川の河口で潮の干満の影響を受けるため、頻繁に水位の変動があります。

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橋を東側から見たところ。橋の全長は122m
晴れた穏やかな日は、水面を境に鉄橋が対照的に水辺に映る。この美しさは煉瓦造にしか出せないものです。

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橋のたもと(阿波赤石駅寄り)には踏切があり、そこそこの交通量があります。

「13k906m」
は、起点からの距離。
牟岐線<徳島~海部・79.3km>のうち、起点の徳島駅から13km906m進んだところに、こちらの踏切と赤石川橋りょうがあることがわかります。

列車がやってきた!

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鉄橋のハイライトシーン、上り列車(徳島方面)がやって来ました。

まず車輪とレールの走行音と、それを支える橋桁が鳴動する音が響きます。

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遠ざかるにつれそれらの音は遠くなっていき、やがてエンジン音が聞こえるようになります。

列車から排出されている黒煙は排気ガス。電化されていない場所を走る列車の動力はディーゼル(一部、蒸気機関や蓄電池)なので、構造はトラックに近い。風向きによっては、油臭いあの匂いが感じられます。

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列車が行った後の赤石川橋りょう。

周辺の建物や風景は変わり、河川には改修の手が加えられて、建設当時のロケーションとは異なると想像します。

けれど空と鉄橋、それらを映し出す水鏡の風景は、ここに鉄道が走り始めた当時から変わらない。

それは、建造当時からの煉瓦橋脚だから為せる技。
頻繁に列車が行き交う幹線だったら、耐荷重的な問題で早々にPC橋に架け替えられていることでしょう。

鉄道黎明期の橋桁

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「赤石川橋りょう」から赤石南踏切を挟んだ反対側。名も無き水路と鉄橋。もちろん赤石川橋りょうより短く、せいぜい1スパン分くらい。

ただ、プレートガーダー(=鉄橋)を受ける両方の橋台がイギリス積みの煉瓦であり、相当な古さを感じます。調査する価値大です。

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予感的中。

先述の赤石川橋りょうが歴史の重みがある「貴重」なものとすると、こちらは鉄道黎明期を象徴する「希少」なもの。さて、どの部分でしょう。

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正解はプレートガーダー表面にあり、鉄橋を支える金具。

縦の鋼材が「J」もしくは「し」の形状が特徴であるこの工法を、

「ポーナル桁」
と言います。

名称はイギリス人技師、チャールズ・ポーナルに由来。明治6年(1873)に建築技師として来日した、いわゆる「お雇い外国人」

日本最初の鉄道として東海道線が開業したのが、

新橋-横浜...明治5年(1872)10月14日(新暦9月12日)
大阪-神戸...明治7年(1874)5月11日
(阿南鉄道...大正5年(1916)12月15日)

日本の鉄道は、同じ島国であるイギリスに範を取って建設されました。ポーナルは日本の鉄道黎明期に来日し、特に橋梁建設の分野で活躍した。
しかしながら時代が進み、明治中期にアメリカ式の鉄道技術が入ってくると、ポーナルの提唱した鉄橋は強度不足が指摘されるようになり、以後はアメリカ式での架橋・架け替えが進められました。そのため、ポーナル桁は今やあまり見ることができない橋桁の形状となっています。

阿南鉄道に由来する当地の鉄道の開業は、大正5年(1916)と決して新しいわけではありませんが、既にアメリカ式の橋梁技術が導入されていた時代に新たにポーナル桁が新造されるとは考えにくく、前述の理由で幹線等での鉄橋架け替えにより余剰になった旧桁を移設した、と考えることができる。
移設による工費の縮小はもちろんですが、長大編成や重量のある貨物が頻繁に往来する幹線(東海道本線等)では耐荷重に不安があるものの、そこまでの往来数ではない地方路線においては十分耐え得る、と言うことでしょう。

現牟岐線は鉄道開業から100年が経過していますが、この場所で橋の不具合に起因する事故等が発生したことはありません。誰も目にしない場所で、高い技術力を誇示していると言えます。

赤石川橋りょう(google mapによる地点登録はありません)

< 自家用車 >
高松駅から 約1時間40分、85km
徳島阿波おどり空港から 約45分、27km
< 公共交通機関 >
JR牟岐線・阿波赤石駅下車 徒歩3分

※ 主な地点からの最速・最短距離

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この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。