境内一面イチョウの海に浮かぶ古刹寺院<禅蔵寺薬師堂/愛媛県宇和島市津島町>
「紅葉」
人々を行楽へと駆り出す、四季がある日本ならではの楽しみです。
最も人気があるのはカエデ(もみじ)のであると思いますが、各地で見ることができる銀杏(イチョウ)の紅葉と落葉後に地面が一面真っ黄色に染まる様は、カエデに勝るとも劣らない迫力と美しさがあります。毎年楽しみにしている銀杏のお寺へ今年も行くことができました。
南予で多く見ることができる禅寺
愛媛県南部「南予地方(なんよちほう)」。
城下町であり地域の拠点となる宇和島から、更に南へ進んだところにあるのがこちらの寺院。
山門横に大きな銀杏の木があり、紅葉の時期を迎えると葉が鮮やかな黄一色に染まり、参拝に訪れる者を和ませます。
禅蔵寺(せんぞうじ/愛媛県宇和島市津島町)
南予にある寺院の特徴として、臨済宗(りんざいしゅう)・曹洞宗(そうとうしゅう)の禅宗寺院を、頻繁に見ることができます。
これは、宇和島藩初代藩主・伊達秀宗(だてひでむね)公が入封の際に、自身の菩提寺である臨済宗僧侶を連れて来た事に由来すると言われる。
境内は銀杏葉の海
山門をくぐると左側にイチョウの大木。
参道に沿って進むと本堂。その左に小ぢんまりと佇むのが薬師堂です。
禅蔵寺薬師堂(せんぞうじやくしどう)
この時期、禅蔵寺境内は鮮やかな銀杏葉の海。室町時代建立の記録が残る木造堂宇の屋根は茅葺(かやぶき)。
素材柄、定期的に吹き替える必要がある茅(かや)ですが、陽当たりや湿気など茅素材にとってこの場所は条件が良くない。そのため建立から現在まで5年という短いスパンで吹き替え、維持されているそうです。
と、ここで南予に禅宗寺院が多い通説と史実に違いが生じる。
伊達秀宗が宇和島に入封したのは、慶長19年(1614)。
禅蔵寺の建立と伝えられるのは、天正年間(1573~1591)、または天文9年(1540)。
いずれにしろ伊達家の宇和島入封より早い時期で、案内板に書かれている内容もその事とは無関係。元々この地には禅宗が伝わっていたと言えます。
花頭窓(かとうまど)
禅から発達した茶室などにも用いられる特徴的な窓で、「花」と付く由来は蓮の花をあしらったものから。質素が特徴的な禅宗様式の建築ですが、窓の造りにこだわりを見ることが出来ます。
例年12月上旬から中旬にかけて紅葉を迎える
付近を通る幹線道路・国道56号から眺める禅蔵寺の大銀杏。普段は地域の色と馴染んでいて決して目立つことはありませんが、この時期だけは圧倒的な存在感があります。
禅蔵寺の銀杏の紅葉は例年だと12月上旬と、一般的な紅葉と比べてやや遅め。温暖な令和元年(2019)は12月中旬でもこの通り、落葉が終わっていない銀杏を見ることができました。
禅蔵寺薬師堂
< 自家用車 >
高松駅から 約3時間10分、254km
松山空港から 約1時間40分、111km
※ 主な地点からの最速・最短距離
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