四国のおすすめ観光スポットをご紹介

遠い昔の海難救助と百年後の世界<ノースアメリカン号遭難救助碑/徳島県美波町>

namerican004.JPG

志和岐港(しわぎこう/徳島県美波町)

徳島県としてはもちろん、四国としても「南部」にあたる志和岐港。この場所から北東へ向かった場所にある蒲生田岬(かもだみさき、かもうだみさき)灯台から、和歌山県の紀伊半島にある紀伊日ノ御埼灯台を結んだ線より北を瀬戸内海としているため、この場所は太平洋となる。
黒潮が近くを海流する場所ゆえその恩恵は計り知れないものがありますが、それは荒海と隣り合わせということでもある。この場所でかつて発生した海難事故では、志和岐の住民が総出で救助にあたったことが、語り継がれています。

新しく造られたバイパスに描かれた帆船

namerican002.JPG

志和岐港へは、近年バイパスが開通してアクセスが大幅に改善されました。地域の中心である由岐(ゆき)から、この道を通るとすぐに志和岐へ行くことができます。

namerican003.JPG

そのトンネル入口の左上、帆船が描かれています。漁港である志和岐には似つかわしくない洋船が、この地域で発生した出来事を物語っています。

ノースアメリカン号を救助した志和岐の漁民たち

namerican005.JPG

ノースアメリカン号遭難碑(徳島県美波町)

namerican006.JPG

明治二十五年七月二十三日約二百米当方の荒磯にて難破せる米国帆船ノースアメリカン号二十三名の乗組員を志和岐漁民よく一致協力し激浪の中全員を救助せし功によりハリソン米大統領より銀メダルを贈られるその人間愛と勇敢なる行為は長く後世に伝え漁民の鑑たり

明治25年(1892)7月23日。
神戸港を出港してニューヨークに向かう予定だった米国帆船・ノースアメリカン号が、台風による時化に遭遇して志和岐に漂着。浅瀬に座礁して身動きが取れなくなった。それを目にした志和岐の漁民たちは、自らの危険も省みず荒波押し寄せる中懸命の救助活動を行い、乗員23名(うち、1名溺死)を救助することができた。

米国船及び乗組員を生命の危機から救ったことは、時のアメリカ合衆国第23代大統領・ベンジャミンハリソン(1833~1901)の耳に入り、志和岐の住民へ銀メダルを贈って感謝を表すとともに、漁業等に役立てて欲しいと350ドルが贈られた。

その額を現在の価値に換算すると、明治30年(1897)当時の1ドルが約2円。
米10kgが1円程度で、現在の米10kgがだいたい4,000円くらい(120年で4,000倍のインフレーションってすごい!)。
1円が4,000円程度の価値があるとすれば、この時贈られた350ドルは1,400,000円くらいだったということになります。
※概算

遭難事故から百年後の世界

namerican001.JPG

こちらの記念碑は、平成4年(1992)7月に遭難事故から100年を記念して建てられました。

この年の流行語大賞に選ばれたのが「うれしいような、かなしいような」「はだかのおつきあい」
双子で100歳を迎えた「きんさんぎんさん」が流行語大賞を受賞。時の人となりました。
お二人が生まれたのはノースアメリカン号遭難事故の同年である明治25年(1892)。誕生日である8月1日は当事故の9日後の事でした。

namerican007.JPG

日本とアメリカ合衆国はその後敵国として戦争することになりますが、その大戦が起きるずっと前に期せずして行われた友好が、四国徳島の小さな漁港でありました。

国と国同士の外交は様々な思惑や利害が関係しますが、民間レベルでは当時の出来事のように、日本人・外国人問わず困っている方へ思いやりを持って接するように心がけたい。そう感じさせる志和岐訪問になりました。

ノースアメリカン号遭難碑

< 自家用車 >
高松駅から 約2時間20分、114km
徳島阿波おどり空港から 約1時間30分、56km

※ 主な地点からの最速・最短距離

周辺・関連記事

tainohama005.jpg

2018,8/28 列車を下りたら、徒歩0分で海水浴。夏だけの臨時駅 < 田井ノ浜駅 / 徳島県美波町 >

naka011.JPG

2018,11/14 終戦間際に発生した列車空襲事件 < 那賀川橋りょう / 徳島県阿南市 >

matsusaka011.JPG

2019,6/30 日本最古のコンクリート製トンネル < 松坂隧道 / 徳島県牟岐町 >

etoshinpei001.JPG

2019,7/6 江戸を東京と改めた男の最期の地 < 江藤新平遭厄記念碑 / 高知県東洋町 >

shima004.JPG

2019,7/12 土佐の長宗我部元親、他國侵攻の契機となった事件 < 島弥九郎事件 / 徳島県海陽町 >

inotoge004.JPG

2019,7/18 前身は徳川時代?山中の古トンネル < 猪ノ垰隧道 / 徳島県海陽町 >

stkaifu009.JPG

2019,8/23 徳島県末端の高規格鉄道駅 < 海部駅 / 徳島県海陽町 >

stkannoura013.JPG

2019,8/29 全長僅か8.5km。ミニ鉄道の終着駅 < 甲浦駅 / 高知県東洋町 >

tnakaishi001.JPG

2019,9/16 小山を通過するために設けられた煉瓦巻トンネル < 赤石トンネル / 徳島県小松島市 >

bgakaishi001.JPG

2019,9/22 今も変わらない建造当時の佇まいを見せる鉄橋 < 赤石川橋りょう / 徳島県小松島市 >

bgtatsue005.JPG

2019,10/16 明治初期の構造を見ることができる鉄橋< 立江川橋りょう / 徳島県小松島市 >

funatsu001.JPG

2019,11/21 國境最前線。山奥の番所跡<船津番所跡/徳島県海陽町>

この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。