想いがある建築、空に浮かぶ人工土地(坂出人工土地|香川県坂出市)
塩田で盛んだった坂出地区。
しかし、時代の流れとともに塩田業が下火になり、引き換えに商人が増え、爆発的な人口増加が問題に。
限られた土地で増えていく人口をどのように住まわせるのか。
そこで、更なる人口増加を踏まえて「1階に商店、2階以上に住居空間を設ける」という、人工的に土地を作り出す『人工土地』が考え出されました。(日本各地において人口増加に悩まされていた当時、人工土地の構想は各地で練られたものの、実現したのはこの坂出だけなんだそう!)
さて、実際に訪れてみると、、、
こんなにオリジナリティのある佇まいにもかかわらず、周囲と違和感なく溶け合っており、そっとそこにある。
意識せずに歩いていると、通り過ぎてしまいそうなほど。
こんなに不思議な違和感ある造りなのに、何の違和感もない調和力がまず凄い。
なんと! グリーンも1Fの駐車場から、2Fの住居区まで繋いでいます!
また、建物のランダム性により、立体的コミュニティがある場所。
散歩ができるような入り組んだ小路は、ご近所さんと出合い頭に言葉を交わせる工夫なのかな?
そんな風にヒトの交流が想像できる、ゆとりのある空間。
「ここに集まってくださいよ!」とお膳立てするわけでもなく、気が付けば形成されている。何か新しいことに出会えるような、期待に満ちた空間。
団地という良さが、そこに、最大限に生きている。
コンクリートの中にだって、ちゃんと自然もある。生活もある。ヒトがいる。商店・飲食店、自治会館、文化ホール...ヒトが集まる理由はいつだって、すぐそこにある。
あぁ、なんて素敵。本当に素敵。
こんな素敵なコンセプトを持った人工土地が日本に1つしかないと言うのも驚きだし、時代と共に、老いてきてしまっている事実が切ない...。
建物は、可能性を広げることもできるし、つながりを生むこともできる。逆に、建物は、可能性を狭めることもできるし、つながりを殺すこともできる。そんなことを感じました。
現代にこそ、もっと、こんな場所が欲しい。
コロナ禍でヒトとの直接的な接触機会が少ない今、心からそう思わされた素敵な場所でした。
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コトバスエクスプレスの降車場所となる「JR宇多津駅南口南」からJR予讃線 高松行に乗車し約5分「JR坂出駅」で降車。JR坂出駅から(240m程度)歩けば、「坂出人工土地」に到着しますよ。
※詳しい情報は外部サイトをご確認ください。
【坂出人工土地】
用途:住居・商店
設計者:大高正人
構造形式:鉄筋コンクリート造
所在地:香川県坂出市京町
文化財:DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築
※住宅地となりますので、見学・撮影には住居人のプライバシーにご配慮ください。
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