井筒屋敷で楽しむ和三盆体験と引田の歴史散策(讃州井筒屋敷|香川県東かがわ市)
2025年の瀬戸内国際芸術祭で新たに加わる「東かがわ市・引田エリア」。
前回の「養殖発祥地・引田で叶える"知識と味覚の冒険"(マーレリッコ&ワーサン)」編ではの海の魅力を堪能しました。今回は、歴史と文化が息づく「引田の古いまち並み」の中の「讃州井筒屋敷」さんを中心に、新たな魅力をご紹介します。
香川県の東端に位置する東かがわ市。
その一角にある「引田(ひけた)」は、かつて瀬戸内海を行き交う船の重要な寄港地として発展しました。地形的に風を避けやすいことから、平安時代には"風待ちの港"と称され、船乗りたちは風が吹くのを待つ間、引田の町でしばしの休息を楽しんでいました。
そんな理由もあり、人の行き来が盛んなことから、全盛期には料亭、商店、旅館などが100軒ほど立ち並ぶほど賑わいのある町であったそうです。江戸時代には、「北前船(きたまえぶね)」という大阪と北海道を行き来する商船の立寄港でもあったことから、更には醤油や酒の醸造が発達しました。引田の町並みには、今もその歴史の名残が残ります。
今回は、そんなレトロな雰囲気ある「引田の古いまち並み」を散策していきます。前回訪問した「マーレリッコ・ワーサン」さんから車で約5分。引田エリアを観光するのに便利な駐車場(無料観光駐車場)へ車を止めさせていただき、「引田の古いまち並み」を歩いて巡ることにしましょう。
散策のスタート地点は、かつて醤油と酒造りで栄えた旧佐野家の屋敷を改装した観光交流拠点『讃州井筒屋敷』。広々とした敷地内には5つの蔵や趣のある母屋、和三盆の体験スペースなど、見どころが詰まっています。
南門を入って正面にある御影石のこの彫刻は、世界的な彫刻家の流政之(ながれまさゆき)さんが手がけた「まちこまた」という作品です。
敷地内には「一之蔵」から「五之蔵」まで5つの蔵が立ち並んでおり、各蔵にて、史料の展示や母屋の見学、地元の特産品を使用した飲食店、和三盆や手袋作りなどの体験ができます。
また、朝ドラファンには見逃せない"笠置シヅ子さん"をモデルにした「ブギウギ」撮影で使用された小道具も置かれていました!
更には、六郎の亀まで......!!(喜)
毎朝欠かさずに朝ドラ「ブギウギ」の時間帯はテレビに噛り付いていた私としては、思いがけない嬉しい再会(?)です!
そんな感じで、敷地に足を踏み入れて早々の段階で、見所が多すぎて。もはや一体どこから何を見れば良いの?!な状態だったので、受付にてパンフレットをいただき、そちらを参考に館内を見学することにしました。
まずは「讃州井筒屋敷」を所有していた旧佐野家がお住まいだった「母屋」へ。「讃州井筒屋敷」さんでは施設への入場自体は無料ですが、母屋の見学は入館料が必要です。
靴を脱いで館内用のスリッパに履き替えると、まずは佐野家と引田の町に関する資料が並んでおり、佐野家が"引田"という町を語るに外せないほど大きな存在だったのかということがよく分かります。
この「母屋」は、江戸後期から明治期に建築された建物とされており、お屋敷を取り囲むように広がる庭園や、心地よい風が通り抜けるお座敷。実に風情ある趣深い景色が堪能できます。
こちらのお座敷の写真をご覧ください。
奥座敷へ向かう廊下が畳敷きになっています! 天井の高さも約3m60cmと当時の住宅に比べてとても高くなっています。このことからだけでも、このお座敷はとても格が高い場所であったことが伺えますね。
そして、当然高貴な方は、出入口も格別待遇。写真の廊下の奥右手には「御成門」があり、こちらから直接お座敷に上がられていたそうです。
この御成門の延長上、座敷の東側には浴室とトイレもあるのですが、トイレにはなんと輸入タイルが使用されています。この浴室とトイレは、井筒家の家族でも使用が許されておらず、高貴な方専用の水回りとされていたそうです。
個人的には、この水回りに設置されている窓にあった緩やかなカーブを描いた木枠がたまらなく好きでした! 品の良さも防犯性も兼ね備えています。
防犯といえば、鴨居の上には隠し武器がありました......!
当時の緊急時への備えが伺えます。
丸い切り抜きの飾りが可愛い廊下と母屋横を通って、朱色の屋根がある「あずまや」へ。
「あずまや」とは、一般的に柱と屋根だけの休憩用または眺望用の小さい建物のこと。こちらの建物では、あずまやと渡り廊下とが一体化しており、廊下を渡りながら足を止めたくなる。そんなホッと安らぐような場所となっています。
よくよく見ると、この廊下板も少し特徴的。ヒノキの節がある材料を並べたうえで、その間にスギやコブシ丸太が2本ずつ挟まれており、意匠を凝らした渡り廊下になっています。
先ほどの渡り廊下を通った先にあるのが「茶室」となります。
茶室の上の方にある左側の小窓の影にご注目ください。
この影、船のように見えませんか?
港町である引田らしい意匠。職人さんの洗練された技術と遊び心が粋ですね~!
土蔵も今は展示室のようになっており、佐野家の営んできた「醤油」「酒」などに関する資料や、佐野氏の経歴・写真、某テレビ番組で見たことしかないような重厚な作りの金庫などが置かれてあります。
※土蔵...漆喰や土壁が使われている昔ながらの蔵で、古くから米や道具などの収納、保管をするためにあります。
台所には、広い土間と昔懐かしい「かまど」もありました。
こういう昔ながらのおうちを見学すると、生活様式の変化を感じるとともに、時間の流れがゆっくりになるような錯覚を覚え、時間の旅をしているような、貴重な時を過ごしている気持ちになります。
そんなこんなで見学に夢中になっていましたが、時計を見たら、大変......!!気付けば、予約してあった体験予約の時間が迫っているので、急いで体験場所の「二之蔵」へ向かいます。
「讃州井筒屋敷」さんでは、いくつかの体験メニューがあるのですが、その中でもわたしは地元の特産品である「讃岐和三盆の型抜き体験」をさせていただきました。この体験では、本場の職人さんと同じ工程で型を使って和三盆の型抜きを行います。
「讃岐和三盆の型抜き体験」では、和三盆を霧吹きで湿らせ、手でこねてから濾して、型に押し込み、型から外します。シンプルな工程ながら、職人の技を実感できる貴重なひと時です。
手順最初にある和三盆へ水分を含ませることで、型に入れた時のカタチを定着させる効果があるんだそうです。時間が経てば経つほど、水分が抜けて、よりしっかりと崩れにくくなるそうです。
そしてこれが、出来立ての和三盆の食感をかなり特別なものにしてくれます。カリッと歯を入れた後の解ける柔らかさがいつもよりもほろほろっと柔らかく解けていきます。水分が抜ける前のほろっという柔らかさは「讃岐和三盆の型抜き体験」でしか楽しめません!
また、型抜きのコツは、しっかりと押し込むこと。ちなみに押し込み具合によって、体験では11個~12個ほど作れることが多いそう。型から外した時の繊細な線がしっかり出ているのを見るたびに感動します。そして、あれだけギュギュッと押し込んだものが、口の中であっという間にほろほろと解けていく。そのギャップにも、また感動です。
完成品はお持ち帰りできますし、出来立て和三盆が食べられる意味でも、とても貴重な体験です。所要時間は30分ほど。お子さんでも手軽に体験できます(事前予約制ですが、当日団体などで体験会場が埋まっていなければ当日予約も可能とのことでした)。
ぜひ、お時間に余裕があれば「讃岐和三盆の型抜き体験」も楽しんでみてくださいね。作りたての格別な和三盆を食べられる機会です!
このほか、敷地内には一之蔵に「ごはんや醤」というカフェもあります。私が訪問した日は残念ながら休業日だったのですが、こちらでもひけた鰤のシーズンはひけた鰤丼をいただくことができます。「引田の古いまち並み」を歩く時のランチ候補地として、こちらも要チェックですね!
敷地内の奥には、香川の保存木ともなっている「ホルトノキ」があります。とても大きな木です。長く、この讃州井筒屋敷から移り変わる時代の変遷の軌跡を見てきたんでしょうね。
最後に、三之蔵にある「匠の物産館」でお買い物。地元の銘菓や、引田名物の和三盆、名産品の手袋などなど、特色のあるお土産が並びます。
その中で、今回、私が購入したのはこちら。
濃口醤油をベースにうま味を倍増させたお醤油、カツオがベースの薄口と、濃口のだし醤油の3種類がセットになった「井筒屋 だし醤油 三兄弟(味万作ミニボトルセット)[製造:マルムラサキ醤油(有)]」です。
讃州井筒屋敷さんでは、現在お醤油の製造は行っていませんが、坂出にある「マルムラサキ醤油(有)」さんが"井筒屋"の屋号を引き継いでお醤油を製造してくれています。
出汁や旨味を含むお醤油なので、何に使ってもお料理がワンランク上の味に決まります! とても便利で、美味しいお醤油です。
そして、もう一つ。
「高瀬茶」の文字を見て、思わず手に取ってしまった「高瀬茶ラテ」。私は初めてこちらの商品を見たのですが、三木町の(株)マルシンさんが販売されている商品らしく、粉末タイプなのでお湯を注ぐだけでお茶ラテを楽しめます。
実際にいただいてみたところ、香ばしいお茶の香りがふわっと香る口当たりまろやかでとても美味しいお茶ラテでした。寒いシーズンのお供に最高~!
とても良いお買い物ができました。
散々楽しんだ「讃州井筒屋敷」さんに別れを告げ、いよいよ「引田の古いまち並み」を散策!......といきたいところですが、その魅力は次回の記事でじっくりとお届けします。どうぞお楽しみに!
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※詳しい情報は外部サイトをご確認ください。
【讃州井筒屋敷】
所在地 〒769-2901 香川県東かがわ市引田2163
サイト https://sansyuidutsuyashiki.com/
定休日 水曜(祝日の場合は営業)
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